-強盗編-

 強盗事件が頻発している。
 盗られるものが「コンビニのシュークリーム」や「スーパーのキッチンペーパー」など意味の分からないものばかりであり、その数も毎回1つだけという被害の小ささ、および市内以外で同様の事件は発生していないことから、大きな騒ぎにはなっていないが。
 とはいえ、立て続けに起こっていることから、市内各地の商店では一応注意喚起はなされている。

注意!
現在、市内では強盗事件が多発しています。
対策を十分に行ってください。
なお、全ての事件で、目撃者は「理解不能な事態が起きた」と証言しています。詳しくは警察が調査中ですがくれぐれも注意してください。

「兄貴、流石にここまで知られるとヤバいっスよ」
「何言うてんのや。これぐらいやってこそナンボってやつやろ」
 字面だけ見れば明らかに怪しい二人組。残念なことに、まだ寒さの残る今では、「少し着込んだ程度の二人組」を不審に思う人間は皆無のようだ。誰も二人の会話に耳を貸す様子もない。
「ええか、俺らは何のために店ん中ひっくり返してんねん」
「そうっスね……あ!」
「せやろ? やるからにはパーッと派手にやらんと! 目立つもん勝ちや!!」
「っスね!!」
「俺たちが目指すのは……」
「「魔法異能の名誉返上・汚名挽回!!」」
「っつーことで次はでっかく……ホールのピアノと行くで!!」
「ラジャー!」

 彼らの次なる狙いは、市内某ホール。そこでは、市どころか県じゅうの小学校が一同に会する大規模な合唱コンクールを控えている。

当日編につづく